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ちょうどいい相手~Side:萌~
「久しぶりにゆっくり萌と食事が出来て嬉しいよ。」
「私も。」
私は高級ホテルのスイートルームで、ルームサービスに舌鼓を打っていた。
「ワインのおかわりどう?」
「頂こうかな。」
彼は私のワイングラスに赤ワインを注いだ。
優しく、格好いい彼。
経済力も申し分ない。
傍から見れば理想の恋人同士。
「最近、彼女とはどうなの?」
「今、その話はいいだろ?」
「どうして?」
「今、俺は萌と居るし、これからは萌だけと居たいと思ってる。」
この男もか。
康介とは友人の飲み会で知り合って、そのまま浮気相手になった。
私は人の彼氏しか好きになれない女。
自分がクズなことは、私自身が一番自覚している。
康介は、彼女と浮気相手の私を天秤にかけ私を選んだ。
つまり、略奪成功。
と同時に、康介とはさよならだ。
なぜ、私に略奪させてしまうのだ。
私と彼女の間で、もがき苦しみながら、彼女と付き合い続けてくれたら、私もまだ好きでいられたのに。
一気に冷めてしまった。
「帰るわ。」
「萌?」
「彼女のこと大切にね。」
「おい、萌!」
「さよなら。短い間だったけど、ありがとう。」
「萌!!」
スイートルームに私を呼ぶ康介の声が響いた。
だけど、私は振り返らずに颯爽と部屋をあとにした。
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