ちょうどいい相手~Side:萌~

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私は同性から嫌われている。 なぜなら、人のものを奪ってしまうから。 自業自得だ。 だけど、簡単に心変わりする男もどうかと思う。 相手の求める言動をし、適度な距離感を保つ。 そして、私よりも本命を大切にしてほしいという理解ある女を演じる。 これで準備は完了。 あとは、相手好みにカスタマイズした偽りだらけの私に男が堕ちていくのを待つだけ。 その姿は滑稽で、一気に冷めてしまう。 だからこそ、私に略奪されない男性と出会いたい。 自分勝手でワガママなのは分かっている。 でも、私は望みを捨てきれないでいる。 そんなことを思いながらお酒を飲んでいると、ふいに視線を感じた。 私は視線を感じた方を向いた。 そこには、先程、私が思わず見惚れた男性が居た。 彼と一瞬だけ、目が合った。 でもそれだけ。 今日は、1人で飲みたい気分だ。 時間にも、男にも縛られずに。 「マスター、同じものを。」 「かしこまりました。」 私がお酒を待っている間に、その男性は煙草に火をつけた。 なぜか私は彼が気になり、その行動を目で追ってしまう。 しばらくすると、彼が立ち上がった。 帰るのだろうか。 「お待たせしました。」 「ありがとう。」 その時、注文したカクテルが届いた。 彼の観察はここまで。 私は美味しいお酒を飲みながら、ひとりの時間を満喫することに決めた。
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