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雨宿り~Side:朔~
俺は2杯目のマティーニを飲み終わったところで、マスターに声を掛けた。
「チェックで。」
会計を素早く済ませた俺は席を立った。
「ごちそうさま。」
俺はマスターにいつものように声を掛け、店を出た。
「雨だ。傘持ってないのに。」
バーを出ると、大粒の雨が降っていた。
今朝の天気予報では、降水確率は10%だったはず。
ツイてない。
バーから自宅まで、徒歩で10分程かかる。
ここは路地裏。
タクシーも走っていない。
仕方なく俺は、バーの軒下で雨が止むのをしばらく待つことにした。
通り雨ならば、すぐ止むだろう。
待つこと5分。
止む気配は全くない。
濡れて帰る覚悟をした時、バーからあの女性が出てきた。
すると、女性が俺に話しかけた。
「雨止みますかね?」
「止んでくれるといいのですが。」
「傘持ってないや。」
「俺もです。」
「もう少し待ってみようかな。」
女性は俺の隣で雨宿りを始めた。
ノースリーブのワンピースを着ており、少し寒そうな仕草を見せた。
「あの、俺ので申し訳ないのですが」
俺はスーツの上着を脱いで、彼女に差し出した。
「ありがとうございます。」
「煙草臭かったらすみません。」
「ふふっ、大丈夫ですよ。」
初対面なのに、なぜか彼女とは波長が合う。
突然の雨もわるくないかもしれない。
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