優しい観客と永恋の忘音

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記憶にある早馬先輩の優しさ。 どんなに取り繕っても、私は未だ早馬先輩に恋しとる。 忘れられるわけない。私が人生で初めて恋した人や。将来を全部捧げると誓った人や。だから私はずっと特別な人を作らず、誰のモンにもならず、ただの(おい)(かわ)麻美であり続けた。それだけ想い続けとる早馬先輩の妹なら、大事にせんはずないやろ。 「麻美先輩は、瀬川先輩から美沙のこと聞いてなかったんですか? おかしいなあ。あの子は先輩のこと、麻美先輩って呼んでたのに。てっきり面識があるものだと」 何や、胸がざわつく。理香とは違う世界におるみたいや。 「私のこと、そう呼んどったん? や、()うたことないどころか、早馬先輩から妹がおるとも聞いとらん⋯」 いくら記憶を探っても、初めて彼女に()うたんは、後輩たちの(こじ)れた話し合いの席やった。最初から敵視されてたけど、早馬先輩の妹や言うてくれたら、私の態度も変わったのに。 「そっか。まあ、瀬川先輩も言いづらかったのかもしれませんね。美沙は、お兄ちゃんが好き過ぎて、兄妹であることを恨んでましたから。小学校時代にも自殺未遂してたんですよ。何度も、何度も。そうすれば瀬川先輩が優しくしてくれるから、そのために⋯」
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