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「⋯麻美先輩は、美沙のことも守ろうとするんですね。今、そんな顔してました」
理香に言われ、私は吐息がてらに頷く。
「ホンマなら仲良うできるはずやったのに、と思うてな。私が美沙に認められる女やなかったって落ち込んどる。直接話せたらええんやけど、あの子は警察に追われとるやろ。のこのこ出てくるとも思えんし、どうしたもんやろか」
間接的でも、私がどれだけ早馬先輩を想うとるか伝えられたらええねんけど。
「悪いのは美沙じゃないですか。先輩は何も悪くないです。ボウガンで撃たれた被害者なんだから、逮捕されるのを望むべきじゃないですか」
ホンマにそうやろか。たとえ罰が下されても、あの子の心の闇は救えへん。むしろ余計に自分を追い込んで、苦しゅうなるんが目に見えとる。
「あの子は色々悪質やからな。私は示談するなら応じるし、処罰感情もないけど、おそらく不起訴にはならへんやろ。前科がつくんは免れん」
「え、示談に応じちゃうんですか!?」
「当然、応じるよ」
言うと理香は、怒ったように私を見よった。
「そんなの甘過ぎ! 罰を受けたって更生しない人いっぱいですよ! 表面だけ謝罪すれば許されるから、日本は被害者泣き寝入りの国なんじゃないですか!」
この子はチャラけとるようで現実をよう知っとる。ホンマにこの国は、加害者救済に重きを置き過ぎて、被害者救済を軽んじとるからなあ。
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