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「理香、そうやないんよ」
私はゆっくりと、言葉を丁寧に編み進める。
「加害者は厳然と罰すべき。これは私の核たる考えや。権力のある罪人が、軽罰で済むのはおかしい。被害者泣き寝入りなんて論外や。被害者を守り、被害者のために加害者を罰する。そうでないと社会がおかしゅうなる。美沙は明らかに過失やないし、殺人未遂が適用されても不思議やない。けど、私は示談に応じるよ。たとえ不起訴にならんくても、あの子が加害者でも、守りたいと思うからね」
理香の顔が歪んだ。まるで私の甘さを憎むみたいに。
「先輩の言ってることは破綻してます! 何で美沙を守るんですか! あの子はあたしたちの大事な先輩を傷つけたんですよ! あたしは絶対許せない。先輩のお友達や後輩たちも絶対許さないと思います!」
私は動く方の手で、そっと理香の頬に触れた。より思いを込めて、一つずつ言葉を編む。
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