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「ありがとな。理香みたいな後輩を持てて私は幸せや。自分の代わりに怒ってくれる人の存在は宝物よ。あったかくて、ありがたいわぁ」
手のひらに熱い滴が垂れてきた。私のために泣いてくれるなんて、あんたはホンマ優しい子や。
「けどな、美沙のことはできる限り救ってやりたいんよ」
「どうしてですか⋯。瀬川先輩の妹だから?」
「うん、それもある。でも、本質はそこやない」
私は手の腹で優しい涙を拭ってやり、微笑みを添えて言った。
「美沙が、過去に生きとるからや。過去に縛られて、過去にばかり生きとる子には、足を踏み出すスペースを作ってやらなアカンのや」
理香は目を真っ赤にして私を見た。病棟ならではの雑音なんか、聞こえへんて顔しとる。
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