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一心不乱
しばらく学校を休むことにして絵を描き続けている。
親に適当に嘘をついたら簡単に休ませてくれたんだ。親は僕に無関心。
喉が渇いたら何か飲むけど、食事はしばらくとっていない。僕は絵に取り憑かれている。
あれから真由が家に来て、西本が遠くの病院に入院することになったことを聞いた。
「もう……二度と私に近づかないで…」とか言ってたくせに、それほど時間が経たないうちに家に来るなんて。そういうところが真由らしい。
僕が絵を描いている話をできないまま、「今日はちょっと様子を見にきただけだから」と言ってすぐに帰ってしまったけど。
西本のことはどうでもよくなった。今は真由の絵だけを集中して描いているからだ。
あの日の真由の失望と怒りが混じった表情は、本当に美しかった。
なぜ、これまで真由を活かしてこなかったのだろうかと悔やんでいる。
これから真由の新たな一面を発見できた喜びに浸りながら、あの日の公園に存在していた真由の美を表現するため絵を描き続ける。
何もかも知っているつもりだった真由にこれほどまでの魅力が秘められていたなんて……大発見だ!
本格的に絵を描くことを始めたばかりだから、いつ完成するのかわからない。完成することができるのだろうか? 完璧に表現できる程の才能に到達できるだろうか?
一つだけ確かに言えることは、未完のまま死んだとしても幸せだということだ。
名声とか名誉とかのために描いているわけじゃない。
僕は美しい絵を描く行為自体が大好きなんだ。
(了)
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