僕の好きなクラスメイト

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僕の好きなクラスメイト

 同じクラスの西本玲奈が好きだ。    西本は僕と同じ高校に通っている2年1組の生徒。美術部に入っていて彼女が描いた絵は去年、有名なコンクールで入賞したらしい。  まだ、その絵を見せてもらったことがないのが悲しいのだけど、西本とはあまり話したことがないから仕方がない。そう……仕方がないんだ。地味な外見で、恋愛に対して臆病者の僕には決して手の届かない憧れの存在なのだから。  西本は絵画の才能だけでなく学業全般の成績も優秀で、運動神経も抜群に良い。性格も良く、笑顔が可愛くて魅力的だ。少し変なところもあるけど、その個性的なおかしさも含めて僕は好きだった。    西本といえば、僕には西本と親友の真由という幼馴染がいる。同じクラスだ。  真由のことを可愛いとか言う男子生徒がクラスに何人かいるのだが、僕は真由と小さな頃から家族ぐるみで一緒に過ごしてきたせいか、そいつらと同じような目で真由のことを見たことはなかった。どのクラスにも必ず数名いる、派手な感じの騒がしい奴じゃないかと言ってやりたくなる。  最近、放課後の教室で真由と喋っていたら西本の話題になった。 「耕太、絵を描くのすごい下手くそなんだから玲奈に描き方教えてもらったら? その気があるなら言っておくけど」 「いや、いいよ。絵にあんまり興味ねーし」 「ふーん」  無関心なふりをしてしまったが、本当は西本に教えてもらう機会があるならば是非ともお願いしたいところだった。しかし、本心とは裏腹に断ってしまった。そんな自分を殴ってやりたい気持ちに駆られる。距離を縮める良いきっかけになれたかもしれないのに。  僕は真由に内緒で何かの絵を描いてみようかなという気になった。西本と共通の話題ができるのはいいことだ。やはり、後で真由に手助けしてもらおうか。 「でも、そんなに西本の絵って上手いのか?」 「もちろん。玲奈の絵って、ほんと凄いんだよ! 見る人をグワって惹きつけるんだから」 「ずいぶん雑な感想だな」  適当な性格の真由らしいと思って笑いながら、みんなが教室の外へ次々と出ていくのを眺める。     すると、笑われて悔しくなったのか「うるさいなあ! 玲奈の絵の実に素晴らしい点はですねぇ、印象派っぽい雰囲気に玲奈らしいオリジナリティを加えてグツグツと煮込んだ感じなのですよ」と真由は唯一知っている『印象派』という美術ワードを使い、力を込めた言い方をしながら僕に顔を近づかせて睨んだ。 「またしても雑な感想っ」と僕がからかうと真由は、「いいじゃん、雑で。この絶妙な雑さ加減が私のオリジナリティなんだから」と得意気な顔をした。 「昔から得意気になると、そういう輝いた顔するよな」と、そのまま思ったことを口にしたら、目があった真由が「えっ?」と困惑した表情を浮かべた。 「いや、何でもない」 「あっ……そう。そろそろ私、部活に行かなきゃ」  真由が焦る素振りを見せる。 「ごめん。今のセリフ、ちょっとキモかったな」 「そんなことないよ」 「それならいいんだけど」  少しホッとした。  が、「ちょっとどころか、かなりキモかったよ」と真由が言い放った。 「えっ?」顔が熱くなる。 「あはは、耕太、困ると昔からそういう顔するよね」  真由は荷物を持って笑いながら教室を去って行き、背後から、これまでの会話を聞いていたらしい数人の女子たちの笑い声が聞こえた。  
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