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斗和は時折どちらに似たのか分からない発言や素振りをすることがある。
菫の張り詰めた表情が和らいだのが、傍から見ていても分かった。
菫は孫を抱き締めると、千歳にも柔らかい黒色の瞳を向けた。
「斗和くんというのね。素敵なお名前。……千歳さん」
「……はい!」
菫は目尻に皺をつくりながら、千歳に柔和な表情を見せた。
婚前にレグルシュとフェロモンの事故という形で、子供を身籠ってしまった。
オメガである千歳のほうがわざとアルファのレグルシュを誘ったのではないかと、そう捉えられてもおかしくない。
それに、菫はオメガのせいで、愛するパートナーを失ったのだから……。
「あなたのような素敵な方とご家族と、ご縁が結べて光栄です。瑚雪のシッターをしていたことは、エレナから聞いていましたよ。千歳さんのお人柄は、瑚雪や斗和くんを通してよく分かりました。それに……あのレグルシュが選んだのだから」
菫の言葉に、目と頬がじんわりと温かくなる。
レグルシュのほうも、白い肌を千歳と同じように染めていた。
「千歳さんに一つ、お願いがあるのだけれど、聞いてくれるかしら?」
「はい。何でしょうか?」
「いつでもいいから、斗和くんを連れてうちに遊びに来てちょうだい。独居の老人は結構寂しいものなのよ。エレナと樹さんもね」
「ママ……」
「エレナとレグはオメガの方と結婚したから、私に遠慮していたのでしょう? でも、そのような気遣いは不要よ。可愛い孫達に会わせてくれないほうが意地悪だわ」
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