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「うわあぁん……! パパ、ママどこぉー!?」
迷子になるなら、ママの言う通りにしておけばよかった。
一人が怖くて不安で、ママに怒られてもいいから、今は一秒でも早く会いたい。
「とーわ? 斗和ー! どこにいるのー?」
──この声は……ユキくんだ!
ぼくは最後のチャンスかもしれないと思い、せいいっぱいユキくんの名前を呼んだ。
花壇の陰からユキくんがひょこっと顔を出すのが見えたとき、ぼくは自分でも知らないうちに走っていた。
あんなに重かった足が、羽をつけたみたいに軽い。
「にいいぃー!!」
「もー。心配したんだよ? 一人になったらダメだからね?」
「うん……うんっ」
ぼくを叱るユキくんの声が優しく聞こえる。
ぼく達は夕日でオレンジ色になったお庭を、手をつなぎながら歩いた。
「今日のちー。すっごく可愛かった! ちーは毎日見ても可愛いしキレイだし優しいよね」
「ちー?」
「あっ。そっか。ちーっていうのは、ちとせっていうお名前で、斗和のママだよ!」
ユキくんが教えてくれる。
パパのお名前がレグルシュでレグだから、ママは「ちとせ」でちーらしい。
「ねえねえ、ユキにぃ。けっこんしきで言ってたシッターさんってなに?」
「あー、あれね。シッターさんっていうのはぁ、お世話をしてくれる人だよ! ちーは俺のシッターさんだったんだ」
「えー!? すごい!」
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