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ユキくんは何でも詳しい。
シッターさんはご飯をつくったり遊んでくれたりするけれど、パパやママとは違うらしい。
ユキくんはシッターさん……ママとの思い出をたくさん話してくれる。
「でね、ちーと俺は結婚しそうになってたんだけど」
「えっ!? ユキにぃとママが?」
「そう! でもレグと結婚したの……」
いつもニコニコ顔のユキくんは、しゅんと悲しい顔になっている。
レグというのはぼくのパパの名前だ。
ぼくはしょげているユキくんの背中を撫でて、よしよしと励ましてあげた。
「でもね。レグは最初、ちーのこと好きじゃなかったんだよ。ちーだって、レグより俺のことのほうがぜーったい! 好きだった!」
「そうなの!? でも、パパはめちゃくちゃママのこと大好きだよ!」
「それぜーったい、俺のマネだからね!? だって、俺がちーのこと好きって言ってから、いちゃいちゃしだしたもんっ」
ユキくんはぼくのママのことは大好きだけれど、パパのことはあんまり好きじゃないらしい。
ユキくんはそのへんの石ころを、思いきり蹴っ飛ばした。
びゅっと飛んだ石ころは、大きな噴水の真ん中にぽちゃりと落ちる。
それがちょうど真ん中で、結構いい音だったので、ぼく達は「おおー」としばらく水面を見つめていた。
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