二人の天使

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「斗和。レグにいじめられてない? 俺、それだけが心配なの」 「え? パパに?」 ユキくんの言っていることが分からなかった。 あんなに優しくてぼくにいつもすりすりするパパが、いじめるなんて。 「全っ然、だいじょーぶ! パパやさしいからねー」 ぼくが答えると、ユキくんは口を大きく開けて「えっ?」と聞き返した。 「レグがやさしい……? ちーの間違いじゃなくて? レグはこんなだよ」 と言って、ユキくんは眉毛の真ん中を人差し指と親指でつまみ、皺をつくった。 もう片方の手で、目尻を斜め上に引っ張る。ぼくは首をかしげた。 「パパはやさしーよ? 幼稚園でもパパはモテモテなんだぁ。……どっちかっていうと、ママのほうが」 ぼくは出かかった言葉を飲み込んだ。 ユキくんがママに話したら大変なことになる! ぼくがおもちゃをそのままにしていたり、幼稚園の給食のプリントを見せるのを忘れていると、今のユキくんみたいな顔になるのだ。 「レグが優しいなんてありえない!」 ユキくんはパパにどんなことをされていたんだろう。 ぼくの言うことをちっとも信じてくれなかった。 「まーでも、俺のママが一番怖いけどね! レグなんか全然相手になんないよ」 「そーなのぉ? ユキにぃのママ、ぼくのこといつも褒めてくれるよ?」 「それはね、斗和が従兄弟だからだよ。だから、あんまりうちのママ怒らせないほうがいいからね。レグはドラゴンだけど、ママはオニ! だからね」
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