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ユキくんの身体がぶるっと震える。
ぼくもそれが伝わって一緒にぶるっと震えた。
ユキくんが歩いていると「どっちだったかなぁ?」と、きょろきょろし始めた。
こんなにも不安なのに、ユキくんはすごくのんきにしていて、ぼくはちょっと怒ってしまう。
「にいぃー!」
「ごめんごめん。ちゃんと帰れるから大丈夫だよ」
ユキくんはハグをして、ぼくをよしよしと慰めてくれる。
しばらく歩いていると、ママとパパが手を繋いで歩いていたところに辿り着いた。
結婚式をした場所は今は誰もいなくて、扉も開いている。
ぼくとユキくんは顔を合わせると、自然とその中へ入った。
「うわぁ……キレイ!」
「ピカピカだねぇ! いろんな色!」
ステンドグラスの模様が、夕日に照らされて白い床に映っている。
パパとママにも見せたくて、それを拾おうとしたけれど、触れない。
「パパとママ。とってもキレイだったね!」
「うん……キレイだった」
ユキくんはパパとママがキスをした場所まで歩く。
ぼくもユキくんについていった。そしてふと、パパやママが言っていたことを思い出した。
『ママみたいに素敵で優しい人のことを、オメガと言うんだ』
『パパはアルファだ。アルファだからママと結婚をして、斗和が産まれたんだ』
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