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──あるふぁとおめが。
あのときの一回しか聞いたことのない単語。
でも、ぼくはそれをしっかりと覚えていた。
「パパがあるふぁで、ママがおめが……」
ぼくは自分でも知らないうちに、そう呟いていた。
「斗和はアルファなの?」
「うーん、わかんない。またパパに聞いてみるね」
──ぼくは、どっちなんだろう?
パパはぼくのことをママに似ていると言うし、ママはパパにそっくりだと言う。
パパとママは全然似ていないのに、二人はそんなことを言う。
ぼんやり考えていると、ユキくんが急に抱きしめてきた。
「斗和。すっごく可愛い」
可愛いはパパとママに毎日たくさん言われているけれど、ユキくんの可愛いは心がきゅんとする。
ぼくよりも明るい色の、パパと同じ色の目にステンドグラスの光が入り込む。
「ユキにぃ……? ……ん」
ユキくんが目を閉じると、ぼくの口に温かいものがぶつかった。
ほっぺや頭じゃなくて、口に。
これはママとパパがしている行ってきますとおかえりとおやすみのときのやつだ。
「ユキにぃ。どーしたの?」
ママとパパはぼくにはしてくれないから、しちゃいけないことだと思ってた。
「斗和は俺と結婚したい?」
ユキくんに聞かれて、ぼくは笑顔で頷いた。
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