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「レグ。見て。赤ちゃんだよ」
レグルシュは千歳の傍らの小さなベビーベッドで眠る、まだ髪も生え揃っていない子に視線を寄せた。
同じように視線を寄せたレグルシュが、息を呑んだのが分かる。
「……可愛いな。すごく小さくて」
看護師に促され、千歳の隣に座ったレグルシュが我が子を抱いた。
緊張した面持ちで、レグルシュは赤子をぎゅっと離さないようにしっかりと抱えている。
千歳は苦笑した。
「もうちょっと優しく抱いてあげて」
「わ、悪い。落としてしまわないか心配で」
レグルシュ以外の三人は、その発言にくすりと笑みを溢した。
レグルシュは「無理だ」と弱音を吐き、千歳へとすやすや眠っている我が子を引き渡した。
タオルケットの上から、レグルシュは大きな手で優しく触れた。
「本当に可愛いな。千歳にそっくりだ」
「まだ目も開けてないのに、そんなの分かるの」
「ああ。きっと美人に育つ」
「ふふ。男の子だよ」
ぽた、とシーツに雫が落ちる。千歳のものではなく。
ふと隣を見ると、ペリドットのように淡く輝く瞳から、大粒の涙が流れていた。
千歳が指摘して、初めて本人も気付いたようで、はっとした顔になると、手の甲でそれを拭っていた。
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