ユキと斗和

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「ちーもアルファなの?」 千歳は笑って答える。 「ううん。僕はオメガなんだ」 「えーっ!? じゃあユキもオメガがよかったなぁ」 そんなことを言われたのは初めてで、千歳はつい吹き出してしまった。 「アルファだとレグと同じだね」 千歳はがっかりしているユキにそう声をかけたが、さらに落ち込むだけだった。 溜め息までつく甥を、レグルシュは鼻で笑う。 「姉貴にそっくりだからな、お前は」 「それってもちろん褒めているのよね? レグ?」 「当たり前だろう」 レグルシュがニヒルな笑いを浮かべた。 エレナは意趣返しとばかりに、ユキの汚れた口元をナプキンで拭いながら、項垂れている我が子を励ました。 「ママがアルファで、パパがオメガで番になったのよ。ユキと千歳くんは?」 「ユキがアルファで、ちーがオメガ……!?」 「そういうこと」 エレナはウインクをして肯定した。 大きなペリドット色の瞳が、いっそう輝きを増したような気がした。 「ユキとちーはちゅがい!」 「番」という発音が難しいのか、「ちゅがい」という発音になっている。 きゃっきゃっとご機嫌なユキとは裏腹に、千歳の横に座る男の瞳は翳りを帯びていた。 「番になるのは俺だ」 日に日にそっくりな顔立ちに近付いている二人は、千歳を挟んで互いに睨み合うのだった。
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