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……────。
楽しい時間はあっという間だった。外はいつの間にか日が暮れていて、一気に涼しくなった。
斗和を抱いた千歳は、ユキの家族を玄関先まで見送りに出る。
騒がしくしていたので、斗和がぐずってしまうのかと思いきや、最後まで眠っていた。
樹はユキを抱えると、斗和の近くに引き合わせた。
「斗和バイバイ!」
「ふふ、斗和と仲良くしてくれてありがとう。あのね、ユキくんがよければ、斗和のお兄ちゃんになってあげてくれる?」
ユキは満面の笑みで頷く。
ユキの伸ばした手を、夢の中にいる斗和が無意識にぎゅっと握った。
「……それと、千歳が世話になったな。その、感謝している」
ユキを抱いている樹に向けて、レグルシュは手短に告げた。
千歳もできるだけ頭を下げる。
「い、いえいえ! 大したことではありませんから。頭を上げてください」
予定日の一週間前、レグルシュが仕事へ出かけた後、身体を動かそうと掃除をしていたら、微弱な陣痛を感じた。
レグルシュに連絡を取ろうとしたが運悪く、その日は出張で電話を取れなかった。
千歳は藁にも縋る思いで、エレナと樹を頼ったのだ。
ユキの登校を見送った直後で、タイミングよく家にいた樹と連絡が繋がり、病院まで車で連れて行ってもらった。
樹は千歳と斗和の命の恩人だ。
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