銀河鉄道江ノ島線の夜

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「アイツはオレ様が気に入って連れ回してた玩具(オモチャ)のオンナが孕んだガキだった。元から体力の限界だったって時にガキまで産んだものだからぽっくり死んじまって、アイツだけが残った。アイツからしたら、生まれた時からオレ達四人が当たり前に、それも面白おかしく人を殺すのを見てきたもんだからな。それが本来、しちゃいけねぇことだなんて知らなかったんだろうよ」  他の四人の仲間とは事情が違うとはいえ、犯した罪に忖度なし。一蓮托生の、償いの輪廻を繰り返すことになった。  数多の世界を渡り歩く内に、龍人は他の四人よりうんと早く、自分の罪を自覚したのだが……。 「あんだけ浄化されてても、龍人の償いはまだ終わらないの?」 「断罪竜は殺した人間と同じ数だけ罪を償えと定めた。オレ達ぁそんなもん数えてなかったから、終わってたとしてもだーれもわかんねぇんだわ」  聞けば聞くほど最悪な話なんだけど、なるほど、とも思った。終わり時すらわからない。それも踏まえての、神様からの罰ってことなのかもしれない。偉い神様ってやつぁやっぱり賢いものなのね、と。  そして、同時に……腑に落ちたような思いだった。我が子、葉織が生まれ持った不思議な能力(ちから)。好悪半々で息子の人生を縛ってきたそれが。自分と龍人……つまりは母と父の罪を共に償ってきた因果だったのだろうか、と。 「……そうだ! いいこと思いついた!」  「賢い神様」よりは遥かに残念な頭の出来と自覚のある波雪だが。この時ばかりは、神さえ出しぬけてしまえそうな妙案を閃いた。愛する人を取り戻すための抜け穴として。 「あんた達が行く異時空? 異世界? とかいうのに、あたしも一緒に行けばいいんだわ!」 「はあ?」 「そしたら次に龍人の順番が回ってきた時に、また彼に会えるじゃないの!」 「正気か? オレ達ぁ星の数ほど女を犯した極悪人だぞ? それもオマエ、永遠に終わらねぇんじゃないかって長き償いの旅に付き合うつもりかよ」 「更生済みなんでしょ? 仮にまだ危ないまんまだとしたって、この『泣く子も黙らせ男も泣かす波雪様』を見くびるんじゃないわよ。あんた達なんかに簡単にやられてやるほどか弱いタマじゃないっつーの」 「そりゃあ知ってるが……龍人が更生させなきゃいけなかった程度にゃあヤベェ過去持ちの女ってこたぁな」  彼らと違って、人殺しまで至ってしまったわけじゃないとしたって。自分だって、過去には何の意味なく、人の心身を傷付けて回ったような人間なのだ。そんな過去の過ちを、後悔しないわけじゃない。しかし、あの頃の自分の間違いの結果、波雪は龍人と出会えたのも確かな事実である。その上に……。
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