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雨七日の神隠し
気付いたときには降っていた、そんな雨だった。
音のない雨はいつのまにか土の色を塗り替え終えている。頭上を見上げると、薄暗い雲が空を覆い隠していた。
今日は雨など降らないはずだった。そんな雲行きではなかったし、いつもの予兆もまったくなかった。
初めての事態に戸惑いながら右手を撫でる。ざらざらとした手の甲に、痛みはない。
(お嬢様が、拗ねなければいいのだけれど)
庭遊びが好きな屋敷の三女の顔を思い浮かべながら、おなつは繕い終えた服を両手に抱えた。
この雨が、おなつの運命を大きく動かす前触れであることなど、露ほども考えずに。
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