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「伊吹さん『女心を蕩かす名言』選手権があったら、ぜったい優勝できますね」
「澄香が横にいてくれればね。勝手に口から飛び出してくるから」
もう、何を言っても、ぜんぜん悪びれないんだから。
お酒を飲んでも簡単に赤くならないわたしも、今は人並みに顔を赤らめているはずだ。
「それにしても、いいプレゼンだったよ」
「伊吹さんのおかげです」
「いや、澄香の実力で勝ち取ったものだ。次期副社長として、これからの活躍を本当に期待しているからな」
「はい。頑張ります」
伊吹さんはふっと口元を緩めた。
「しかし、怪我の功名だな。これで会社でも大っぴらに澄香を可愛がることができる」
「いくらみんなが知っていたって、ダメです。会社では」
彼は微笑むと、手を重ねてきた。
「じゃあ、ふたりきりの時間を無駄にはできないな。今夜は帰さないから、そのつもりで」
そう小声で囁きながら、親指で手の甲をゆっくり撫でてくる。
わたしはさらに顔を真っ赤にして、うなずいた。
もちろん嬉しい。
伊吹さんは相変わらずの多忙で、今日までなかなか一緒に時間を過ごすことができなかったから。
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