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自他とも認める面食いのわたしも、もちろん例外ではなく、彼に憧れていたうちの一人。
ただ、まったく縁のない人だとも思っていた。
彼みたいなモテ男が、真面目が取り柄の、取り立てて目立つ存在でもないわたしに関心を持つはずないと。
それがひと月ほど前のある日。
今考えれば、あの日も今日のようについていない日だった。
第二営業部から第一営業部に配転になったばかりのわたしは、発注数の桁を間違えるという、とんでもないミスを犯してしまった。
謝り疲れてヘロヘロになったところを、勝也さんは食事に誘ってくれて、慰めてくれた。
その帰り道、突然キスされて、誘われるがまま……ホテルへ。
学生時代の幼い恋をのぞけば、彼は、わたしの初めての恋人で、しかも社内で一、二を争うイケメン。
その人の彼女になれたんだ。
わたしはもうすっかり舞い上がってしまった。
でも本当は“彼女“でもなんでもなかった。
勝也さんにとってわたしは、手当たり次第、手を出していたうちの一人にすぎなかった。
今夜、それを嫌というほど思い知らされた。
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