第3章 魔法は解けるものだから

8/22
前へ
/209ページ
次へ
「ああ、後でなんとでも言ってごまかすから」  それができるのなら、最初から偽恋人なんて立てる必要なかったんじゃないのかな、と思ったけれど。  いや、わたしだって、いつばれるかとひやひやしながらご両親と対面するよりも、彼とデートするほうが何百倍も嬉しい。  この人と二人きりで休日を過ごせるなんて、本当に夢のようだし。  外見も中身も、これほど素敵な人に会ったのは初めてだ。  大人で、余裕があって、色っぽくて、茶目っ気もあって。  しかもとても純粋な考えの持ち主で。  もう、はっきり言って、わたしの男性の好みのストライクゾーン、ど真ん中。  いや、内田さんを前にすれば、大方の世の女性は同じように思うはず。  こんな人が現実に存在しているなんて、まだ信じられない。  今朝、彼の部屋で目覚めたときからずっと、わたしはその魅力にあてられっぱなしだ。  でも!  なんといっても、彼は規格外の御曹司。  さっきの買物ぶりから見ても、自分とは完全に別世界の人だ。  この人を本気で好きになってしまったら、それこそ大惨事。  勝也さんのときの比じゃない。  どう転んでも、わたしがこの人に釣り合うわけがない。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6636人が本棚に入れています
本棚に追加