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ここで「もう帰ります」と言ったほうが、賢明なんだろうな。
と、それはわかっているのだけれど……
断るなんて、ありえない。もったいなさすぎる、ともう一人の自分が必死で引き留めている。
うーん、どうすればいい?
なかなか返事をしないわたしに向かって、彼は「ここはどう?」とスマホを差し出した。
見せてくれたのは、夕日が海に沈んでいく動画。
どこかのお店の席から撮影したものらしい。
「わあ、とっても綺麗」
「ここに行きたくないか? 今から行けば、日没にぎりぎり間に合いそうだ」
「場所はどこですか?」
「葉山にあるレストランなんだけど、今日は天気がいいし、最高の夕日が拝めると思うよ」
ちょっと待って。
超絶イケメンと葉山のレストランでディナーをいただきながら、こんなに美しい夕日を楽しむなんて。
なんて贅沢で魅惑的なお誘い。
ほぼ行くほうに気持ちは傾いていたけれど、この一言がダメ押しになった。
「知り合いのフレンチの店でね。食事も絶品なんだけど、ワインがまたうまくて。料理にぴったり合わせてくれるんだ」
しかもしかも、極上のワインつき……
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