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酒飲みには、どうしたって、あらがえない誘惑だ。
日本酒ほどではないけれど、ワインにも目がないほうだし……
今日を逃したら、こんな機会には、もう二度と恵まれない。
断ったら、後で死ぬほど後悔しそう。
誘いを受けないことを選択しようとしていたほうのわたしは、完敗の白旗を上げた。
「はい……ぜひ、ご一緒させてください」
「よし。じゃあ、急ごう」
彼は嬉しそうに言い、スマホでその店に電話をかけてから車を発車させた。
***
抜け道をうまく使い、5時過ぎに目的地に到着することができた。
日の入りまで、まだ1時間ほどある。
レストランは海沿いにあり、店内の窓からは海しか見えず、まるで船上にいるかのよう。
けれど、今日は土曜日。
しかも、これほどのロケーションでおいしいと評判の店なのだから、当然のごとく満席だった。
諦めて、別の店に行くのかなと思っていたら、内田さんは厨房を覗いて、2人のコックさんに指示をしている、オーナーシェフらしき五十代ぐらいの男性に声をかけた。
「山さん」
その人はすぐに内田さんに気づき、こちらにやってきた。
「伊吹さん、お久しぶりです」
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