第3章 魔法は解けるものだから

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 違うんです、と言おうとしたら、内田さんがわたしを制した。 「そうだよ、俺たちが出会った記念日」  そう言って、シャンパングラスを手に取った。 「まあ、それは素敵。では、どうぞごゆっくり」  彼女は軽く礼をして、下がっていった。 「なんで、あんな誤解されるようなこと、おっしゃるんですか」  当惑してそう問うと、彼は「だってそうだろう。出会ったのは……あっ、昨日か」と笑った。     あんまり楽しそうに笑い声を立てるので、わたしも釣られて笑ってしまう。 「でも」 「そんなことはいいから、早く乾杯しよう」  彼に促され、グラスを合わせて一口飲み、その美味に目を見張った。 「おいしい」  わたしはごくんと喉を鳴らして、すーっと喉元を降りてゆく極上の味に酔った。  自然と顔がほころんでゆく。 「こんなにおいしいシャンパン、はじめてです」  彼はグラスを口に持っていき、目線だけをわたしに向けた。 「うん、たしかにうまいな。とっておきを出してくれたみたいだ」  シャンパンを飲み込んだときに動く、彼の喉仏につい目がいってしまう。  そんなところまで魅力的だなんて、本当、困ってしまう。
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