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しいちゃんは、胸の前でぽんと手を叩いた。
「それなら問題ないね。真面目さはわたしが保証する。じゃあ今晩、さっそく彼に聞いてみるね」
しいちゃんは仕事が早い。
営業部で席を並べていたとき、いつもそう感じていたけれど、それはプライベートでも同じだった。
次の日には「昨日の彼に連絡しておいたよ」とLINEをもらい、彼に私の連絡先を教えてもいいかと尋ねてきた。
わたしは「了解」とスタンプで返した。
そのときは、彼氏ができれば、内田さんのことはすぐ忘れられるだろう、と本気で思っていた。
だからいい加減な気持ちで返事をしたわけじゃない。
でも、そんなに簡単にはいかない、とすぐ思い知らされることになった。
その週末、その彼、加藤正さんと食事に行ったけれど、どうしてもピンとこなくて、結局、お断りしてしまった。
しいちゃんが言っていたとおりの、言葉や態度から温厚さがにじみ出ている、とても真面目な人だったけれど。
でも、だめだった。
いけないと思いつつ、話をしている最中、どうしても内田さんのことを思い出してしまって。
けっして容姿やステイタスを比べたわけじゃない。
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