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ああ、この笑顔。
ずっと見たかった……えっ?
スルーしそうになったけど、今、顧問って言った?
いやいや、わたしの聞き間違いだよね。
「顧問って?」
「実は三光で新規事業を立ち上げる話が出ていて、そのアドバイス役を仰せつかったんだ」
「えーっ、本当に本当のことなんですか?」
「そんな冗談は言わないよ」
わー、なんでそんなことに?
理解が追いつかない。
「立ち話もなんだから、車のなかで話さないか。送るよ。この雨じゃ、傘をさしてもずぶぬれになる」
「いえ、もうすぐ小やみになりそうですし」
と告げたとたん、一瞬、外が明るくなって、すぐにものすごい雷鳴が鳴り響いた。
「きゃっ」
思わず耳を塞ぎ、大きな声で叫んだわたしの顔を、彼が覗き込んできた。
「ほら、雷も近いし、まだまだやまないよ。遠慮するなって」
変な意地を張らずに乗せてもらったほうが良さそう。
雷、大嫌いだし。
「じゃあ、すみません。お言葉に甘えます」
頭を下げると、彼はわたしの肩をぽんとひとつ叩いた。
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