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「信じられないです。それに御曹司で、しかも会社顧問のあなたと付き合うなんて、わたしにはぜったい無理です」
「ははっ、前途多難だな」
そう言いつつ、余裕の顔で笑って、まるで大変だとは思っていないことが明らかな口調だ。
もう。
彼の手の内で転がされているように思うのは、気のせい?
でも、じわじわと心に嬉しさがこみあげてくる。
内田さん。
あの日とまったく変わってない。
まだ信じられない。
夢に続きがあったなんて。
***
内田さんが連れていってくれたのは、神楽坂にある、元料亭の建物をそのまま使っているイタリア料理店。
案内されたのは、たたみの上にテーブルと椅子が置かれた、こじんまりした個室だった。
「まずは再会を祝して、乾杯だ」
彼はワイングラスを掲げ、懐かしい笑顔を見せてくれた。
あのとき、彼と過ごしたのはたったの二日。
それなのに、この笑顔は記憶に刻み込まれていて、わたしのなかではまったく色褪せていなかった。
「元気そうだな」
「内田さんも。でも、本当に驚きました。顧問になられるなんて。なんでうちの会社に来ることになったんですか?」
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