第4章 再会の日は雨

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 わたしは居ずまいを正して、彼の言葉を待った。 「そんなにかしこまらなくてもいいよ。まずは俺が顧問になったいきさつから話さないとね」  ちょっと長くなるよ、と前置きして、彼は話しはじめた。  三光ビールは、業界では中堅に位置していて、看板の缶生ビールは、コンビニやスーパーでも常にシェア上位に入っている。  ただ、かつてと比べ、ビールの消費量は減少の一途をたどっている。  大手は、他の飲料や健康食品など、ビール以外の多くの事業からも収益をあげられるが、これまでビール一本でやってきた、設備も資金も乏しい三光は、厳しい経営を強いられていた。  活路を見出そうと、三光とコーディアル商事の経営陣は以前から話し合いを重ね、ビール以外の新規事業を立ち上げる方針を定めた。  そこでコーディアルで、複数の新規事業の業績を上げていた内田さんを顧問に据えることが決まったそうだ。 「顧問というのは暫定で、次の株主総会の了承を得れば、三光の役員になる予定だ」 「じゃあ、一時的な話ではなく、ずっとうちの会社にお勤めになるわけですね」
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