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残された未来が跳ねながら丘を下りてきた。ぼくの前で「さあ、行きましょう」というように頭を下げる。
「アーティ。会えたばかりなのに」おばあちゃんは大きく腕を広げ、ぼくを抱きしめた。「最高の孫……天の国で待ってるわね」
「もし天の国に着いたら、パパに会いに来て。へとへとになるらしいけど」
腕をほどいたおばあちゃんは、微笑む顔をぼくに見せた。
「もちろん! でも、あの子、幽霊とか信じる派? せっかく会ったのに無視されたりしない?」
「どうだろ……」
ぼくは、まだジグが響く納屋の窓や、穏やかに連なる丘、ワタリガラスが去った空、そしておばあちゃんの顔に次々視線を移した。
「異界での話をパパに信じてもらえるか、心配になってきた……おばあちゃんに会えた証拠を何か、持って帰れない?」
おばあちゃんも思案気な表情になる。
「……現世に着いた途端、異界から持ち出したものは煙になっちゃうって言うわよ……あ!」
ケイトリンおばあちゃんは明るい声を上げた。
「そうだ! 私に会った証拠! たぶん、これなら消えないわ」
おばあちゃんはぼくの耳に口を近づけ、呪文のような言葉をささやいた。
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