15 忘れえぬ記憶

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 遠くから、夜空をそこだけ昼の明るさに作りかえて、真っ白なライトの群れが近づいてくる。ショッピングモールだ。 「どこに降りるの?」――まさか、ショッピングモールの駐車場? 車サイズのワタリガラスが? 目立ちすぎる。速攻でSNSをざわつかせる案件だ。  ワタリガラスが低音で二度、三度グワ、グワラッと鳴く。不安を拭いたいぼくの心のせいか、それは「ご心配なく(ノウ・ビ・ボウハ)」と聞こえる。  降りるのは、モールの屋上? たしか屋上も駐車場だったはず……じゃあ、近くの公園? まさか町を通り過ぎて牧草地のど真ん中……?  そんなことを考えているうち、あっという間にショッピングモールの真上へさしかかる。  ワタリガラスは「着きましたよぉ」と言うようにカオ、と一声鳴いた。そして、羽を前に突き出しスピードを緩めた――次の瞬間――ぼくはフランネルのベッドから空中に放り出されていた。 「待っ……!」  いきなりの横回転(バレル・ロール)でぼくを振り落としたワタリガラスは、すでに夜空と同化していた。  ――未来は扱いが難しい。  確かにそうですね、王様。だって未来は、突然何が起きるか分からない――。  さっきまで足の下にあった雲が瞬く間に高く昇っていく。  ぼくは落ちていく――真っ逆さまに――黒い穴に引きずり込まれた時のように――声なんて出ない――耳を切りつける風がごうごうと鳴る。  下からLEDライトの眩い光がぼくのからだを照らし出す。もうすぐショッピングモールのガラスの天井に激突する――。ぼくはギュッと目をつむった。  ――パパ! ママ! リアム……!
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