16 黒い犬と白い紙

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 ぼくのロケット花火は火薬が尽きて、地面に向かい落ちていく。のろのろと近づいたぼくの耳に、苛立つリアムの声が届いた。 「お前、いいかげん気づけよ」  自分のからだが一瞬、強張ったのが分かった。けれど、リアムがそう言い放った先にいたのは、ぼくじゃない。ニヤつくローガンだ。 「お前さ、こないだの練習だって来なかったじゃん。前からずっと言ってんじゃん。お前とは遊ばないし、フードコートにも行かない」  異界帰りの「時差ボケ」の頭にも、なんとなく状況は飲み込めた。  リアムの拒絶の理由を、自分には問いたくないローガン。その泳ぐような視線がぼくの顔で止まる。リアムが自分とつるまないのは、「金魚のフン」のせい。そう自分を納得させることにしたらしい。  リアムに口元が見えないようわざと体を傾けて、ローガンはぼくにささやいた。 「おめー、ちょろちょろ目障りなんだよ」  そしてレプラホーンのニヤニヤ顔より、もっと神経を逆なでするような薄ら笑いを口元に浮かべた。  ぼくはローガンの目をじっと見つめ返した。  キーヴァとウィロウの、今を楽しげに生きる金銀の目。  どれだけの恐怖を握りつぶしてきたか分からない、王の暗闇の目。  一度は怨霊になり果て、今は穏やかに本のページをめくるデュラハンの琥珀色の瞳。  当たり前だけれど、ローガンの目にその光はひとつもない。  今まで、ぼくよりずっと背が高いと思っていたローガンは、やけに小さく見えた。  ぼくはパーカーのポケットに両方の手を突っ込んだ。肩をそびやかし、ローガンの顔に自分の顔を近づけた。  今こそ、あの台詞が役に立つ。 「何、意味分かんねえこと言ってんだ(ホワッタ・ユー・トーキン・アバウト)?」
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