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ローガンの目が一瞬小刻みに揺れた。首筋から順に、みるみる顔が赤に染まっていく。「Cクラス」のぼくに歯向かわれ、うろたえ、湧き上がってくる怒りがそのまま表れたように。
ついでに、ぼくは王の口真似をする。
「ローガン。あとでじっくり話そう」
ローガンの顔は赤を通り越して赤紫色になる。「調子こいてんじゃねえ。ぶん殴るぞ、てめえ」
リアムがあごでぼくを促した。「もう相手にすんな。行こうぜ」
ぼくは一つ思い違いをしていた。
吹き抜けを川のように流れてくるの大勢の中には、不穏な雰囲気のぼくたちをチラチラ見ていく人がいる。警備員だって、きっとその辺に居る。
だから、殴るなんてどうせ口だけだろう、と。
煮えたぎったローガンには、関係なかった。
ぼくが歩き出すより早く、顔を歪ませたローガンの右腕がぼくめがけて大きく振り上がった。
同時に横で、リアムの足がボールを蹴るように動いた。
――だめだ!
咄嗟にぼくはリアムの足の前に入った。チームメイト相手に暴力沙汰なんか起こしたら、きっとレギュラーを下ろされる――。
顔に拳か、背中に足か、両方か。ぼくは反射的に目をつぶる。次にぼくの身に起きた不幸は――。
乱暴に締まった、パーカーの首。
「オェ!」
ぼくは背中を引っ張られ、仰向けにひっくり返った。柔らかいものの上に転がる。リアムの腹だ。慌てて足を引っ込めたリアムが、倒れながらぼくのパーカーを掴んだにちがいない。
空振りしたローガンの拳が宙を巡る。勢い余ったローガンはバランスを崩し、くるりと回れ右をした。
そして――吹き抜けから音が消えた。
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