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ランチのあとすぐ、リアムは午後の授業を受けずに帰っていった。ぼくは一人、リュックのショルダーハーネスを握り、重い足で校門を右に折れた。
迎えの車が長い路上駐車の列を作っている。いつもなら、ママの迎えは人影がまばらになり、おおかたの車がはけてからだ。けれど今日は、校門のすぐ横に見慣れた白い車が停まっていた。
ドアを開け、ぼくは何も言わず車のシートにからだを滑り込ませた。迎えが早い理由は聞かなくても分かる。
思った通り、ウインカーを出しながらママがぽつりと言った。
「リアムのママから連絡があった」
車が走り出す。ママのしんみりとした声がフロントガラスの向こうの夕日に重なる。
「アーティの『ほんとうのおばあちゃん』みたいだったわね……。アーティ、あんたを何度預かってもらったことか……。ママの方のおばあちゃんは、伯父さんにくっついてエジンバラに行っちゃったし。パパの方のおばあちゃんは……ええと……」ぐっと言葉を飲み込むような間があった。「……いないし」
ママは取り繕うように声のトーンを上げ、付け足した。「あー、パパの方のおじいちゃんが亡くなったのは、いつだったかな。アーティがまだ小学校に入ったばっかりのときだっけ?」
「……たぶん」
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