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フジマが積極的に迫り、俺が何か言うまえにシャツをはだけて貧相な胸板を啄んでくる。 「思い出話だけじゃ物足りない。大人にしかできない事で楽しませてくれよ」 「待てシャワーが」 「あとで一緒に浴びればいい」 フジマに耳元で囁かれてぞくぞくする。熱く火照った手がシャツのボタンを外して割れ目に忍び込み、痩せた腹筋をさすりだす。くすぐったさとむず痒さと気持ちよさが入り混じり、だんだんと息が上擦っていく。 「Hってジェットコースターに似てる」 「その心は」 「上がって落ちてぐるぐる回る」 「わけわかんねー」 互いにはだけて脱がし合い、前戯というには余裕がない性急な愛撫に溺れていく。肩幅が広く均整とれたフジマの身体が俺に被さり、滑らかな唇が敏感な皮膚を吸い立てる。 「あッ、ふじ、まあ」 吐息に紛れてかき消えそうな声で名前を呼び、フジマの首の後ろに手をかけて首筋にキスをする。汗でしょっぱいがまずくはない。フジマが俺の身体を優しく畳に横たえ、いやらしく尖った乳首を指で摘まんで揉み搾り、吸い転がして太らせていく。 唾液に濡れそぼった舌が勃った乳首に絡んで芯を刺激すると、腰がじれったく上擦って前が急激に張り詰める。 「あふっ……ァ、そこいっ……ッ、弱いの知ってんだろ……」 「指でされるの痛かった?ぷっくり腫れてるもんな」 わかっていても知らんぷりで、フジマは口角を意地悪く吊り上げて俺の乳首の先端を突付く。 フジマの口唇でまめまめしく育てられ、唾液でぬる付く乳首は外気にあたるだけでさらに感度を増し股間も勝手に昂っていく。 「いいこと閃いた」 フジマがまたぞろろくでもないことを思い付き、息を喘がせて一杯一杯の俺の首筋にふわふわした物を押し付ける。なんと、射的の景品のうさぎぐのぬいぐるみだ。 「それ俺の!」 「いらないって言ったくせに今さら所有権主張するのずるいぴょん」 「一度もらったんだから俺のもんだヤッてる最中にぴょんぴょんするのも萎えっからやめろ!」 怒りに声を荒げる俺を無視し、片手に掴んだうさぎのぬいぐるみで首筋をくすぐりだすからたまらない。今度は手足をばた付かせ笑い転げる俺の胸へとぬいぐるみを移し、固くしこった乳首を愛撫する。 「ちょ、あはははひゃあひやめっ、おまっかわいいうさちゃんでなんてことすんだよ!」 「うさぎは精力絶倫だからね」 「責任転嫁すんな!」 ぬいぐるみでんさんざん素肌をもてあそばれ宙を蹴り暴れれば、俺のズボンに手を入れたフジマが先走りの濁流を塗り広げ、すっかり慣れた手付きで後ろをほぐしだす。 「うっ、ぐ……」 「挿れていいか」 フジマが切羽詰まった表情で確認をとり、ズボンの股間を寛げて赤黒いペニスを取り出す。俺は唇を噛んで頷き、腰を浮かせてフジマを迎え入れる。 「あっあッふあっああッァ」 めりこむ圧迫感をやり過ごすと腹ン中が熱を持ち、フジマのペニスが脈打っているのを感じて興奮する。床を蹴って背中で這いずり、フジマの首の後ろに回した手を引き寄せて快楽に身を任せる。 「あッうあっそこっ、あっいいっすげっはァっあ」 「遊園地たのしかったろ」 「いま聞くなよ余裕ねっはァ」 「これは観覧車じゃできないな」 「したら捕まる!」 「違いない」 フジマが激しく腰を使って俺を追い立て、俺は上がって落ちてぐるぐる回る感覚を繰り返し体験する。フジマのペニスが中で膨らんで前立腺を突きまくり、その都度脊髄を快感の電流が駆け抜けてペニスがびゅくびゅく白濁を撒き散らす。 「ふじまっふじまぁイきてっ、ィきて」 「観覧車一周分ももたないな」 「頼むっもっイかせてくれ!」 フジマの揶揄が吐息と一緒に耳朶をくすぐり、耳孔に吹きこまれるとぞくぞくする。 「イッていいよ巧」 瞼の裏で小さい閃光が爆ぜ、訳もわからず腰を擦り付けてねだれば、フジマが眉間に皺を刻んで一際深く激しく奥の奥まで抉りこんでくる。 「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」 てっぺんまで上り詰めたジェットコースターが一気に滑落するような凄まじい快感に背中が撓い、我知らずフジマにキツく抱き付いて痙攣に耐える。 俺の体内で果てたフジマはぐったりし、畳に転がったうさぎのぬいぐるみを一瞥して首をうなだれる。 行為を終えたあと、2人並んで床に寝転がり殺風景な天井を見上げる。裸の胸を上下させたフジマの方は見ず、電灯の光を片手で遮って呟く。 「……観覧車、のってもよかったんだぜ」 フジマが本当にそう望むなら折れてやらないでもなかったのに。コイツが予想外にあっさり引くもんで、それ以上何も言えなくなっちまった。 恋人同士が一生一緒にいられる条件は、フジマにとって簡単に諦めが付く程度のことだったのか。 他にどんな表情をしていいかわからずふてくされた口調で当てこすれば、フジマは天井の一点をぼんやり見詰めたまま、キッパリした口調と横顔で宣言する。 「いい。やめとく」 「なんで」 「所詮ジンクスだろ」 「そりゃそうだけど……」 夢がねーとため息に乗せて盛大に嘆く俺の隣で寝返りを打ち、悠然と頬杖を付く。 「ジンクス頼みで油断してだれかにかっさわられていったら目もあてられない。観覧車に乗っただけで未来が約束されるなら、一緒にいられる毎日の積み重ねが色褪せちゃいそうで嫌なんだ」 噛んで含めるようなフジマの小難しい理屈に妙な顔をすれば、幼馴染は小さく笑って俺のこめかみに自分のこめかみをあててくる。 「俺はこれから巧をもっともっと好きになりたいし、巧にも俺をもっともっと好きになってほしい。ゴールを繰り上げるようなズルはしたくないし、するのは間違ってるって思ったわけ」 たとえばあの遊園地が、あそこを訪れた全ての人々の思い出の集積でできているように。 最初から楽してゴールに行くようなショートカットを、数年越しの恋を実らせたフジマは決して自分に許さない。 「巧と付き合えたのは偶然や幸運なんかじゃない。俺がずっとお前を見て、想い続けてきたからだって思ってるから……観覧車みたいに外からの力に運んでもらうじゃなくて、一緒に歩いていけたらいいなって思った」 たまには喧嘩しながら。そして仲直りしながら。 こっぱずかしい本音をしみじみ語るフジマの横顔を見ているとなんだかわけわからない感情がこみ上げて、愛しさと切なさとおかしさが綯い交ぜになったくす玉が胸ん中で割れて、気付けばフジマの横顔にキスをしていた。 「しゃあねーなー、付き合ってやるか」 不意打ちに瞬くフジマが可愛くて、俺はにししと照れ笑いうさぎのぬいぐるをお手玉する。 あるいは数年後か十数年後、フジマと大っぴらに手を繋いで観覧車に乗りこむ日がくるかもしれない。 偶然に逃げずまじないに甘えず、俺が隣にいる日々を決して疎かにも蔑ろにもせず、歩数をカウントするように有り難がるコイツに惚れ直したって事はその時まで内緒にしておく。
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