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翌朝、ザルイルは早速、俺とライゴの体の大きさを同じにした。
すると、ライゴはただ小さくなるだけでなく、俺にとって見慣れた人間の子どものような姿に変わった。
もふもふの耳と小さなツノは左右に二本ずつ生えたままだったが、それ以外は人間に見える。しかも、俺の勤めてた保育園の制服まで着ていた。
「え……これは……?」
「ヨウヘイが保育しやすいように、再構成のついでに、ヨウヘイの思うライゴの姿にさせてもらった」
ザルイルが、さらりと答える。
言われてみれば確かに、ライゴの姿は、もしライゴが人間の子どもだったらこんなだろうなと思った通りの姿をしていた。
ライゴはキョロキョロと自分の体を見回していたが「へー、おもしろーい」とあっさりその姿を受け入れた。
あ。しっぽも生えてるんだな。
くるりと回ったライゴのお尻からはふさふさのしっぽがなびいている。
「巣には結界が張ってあるから出入りはできない。私から巣の様子はいつでも確認できる。もしライゴが解除したいと思ったなら、いつでも合図してくれ、すぐに解除するからね」
ザルイルはいつもより小さく、毛も無くなってしまった息子に、真剣に語りかけた。
なるほど、彼なりにセキュリティには気を配ってあったんだな。
……と言うことは、今までの、子どもたちと一緒に昼寝してる俺とか、童謡を歌いまくってた俺の姿も筒抜けだったんだ?
内心ちょっと恥ずかしくなってきた俺に、ザルイルは自分の眉間から毛を一本引き抜くと差し出した。
「……これは?」
「まだその姿のままでは不便だろうから、これで私の力を使ってくれ」
差し出されたその毛に触れた途端、それはくるりと俺の首に巻きついた。
「うぇ!?」
慌てたが、首へ食い込む事はなかった。ただ外れそうもないくらいピッタリではあった。
「これでヨウヘイは、自在に物を動かせる力を使える」
試しにと言われて、説明されるままに、部屋に出しっぱなしにされていた積み木を動かしてみる。
確かに。手には触れていないけれど、握っているような感触で、それを動かすことができた。
「うわ、すげぇ……。まるで魔法だ……」
これで、ザルイル達にとっては子ども以下のサイズでも、片付けくらいは出来るかも知れないな。
俄然やる気の出てきた俺に、ザルイルは静かに続けた。
「それに、私がその気になれば、いつでもヨウヘイの首を折る事が出来る」
「……っ!」
思わず息を呑む。
あ……。そ……そうだよなぁ。……やっぱり……?
可愛い我が子を、出自不明の見たことも無いような虫けらと一緒に置いてくんだもんな?
そんくらいは、して当然だよな……。
頭でそう理解しつつも、頬を冷たい汗がつたう。
「脅すつもりはないが、子ども達の事、よろしくお願いするよ」
ザルイルがいつもの紳士的な態度で告げる。
「いえ……、俺もこれは当然だと思います。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺がペコリと頭を下げれば、彼は意外そうに、大きな瞳を少しだけ揺らした。
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