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「ふー、なんとかなったな!」
家中の片付けを終えて、俺は息をついた。
「わーいっ、お部屋、ピッカピカになったねー」
「ライゴがいっぱい手伝ってくれたからな!」
言って、俺は俺と同じくらいの大きさのライゴの頭を撫でた。
「えへへ」とライゴが嬉しげに目を細める。
どうやら子どもたちはどちらも撫でられるのは好きみたいだな。
少なくとも、このサイズなら、撫でてやることも、抱きしめてやることもできる。
抱き抱えるのはちょっと無理だが、今までに比べればずっとマシだ。
鳥だか魚だかわからないような形の時計が鳴って、ライゴが瞳を輝かせる。
「あっ、おやつの時間だ!」
この子達は朝昼晩の間に一度ずつ、この時計が鳴った時におやつを食べていいことになっていた。
ライゴはこのタイミングでいつも冷蔵庫のようなものから、牛乳のような白い液体を出して飲んでいた。
あ。そうだ。
俺は思いついて、ライゴと一緒に冷蔵庫のようなものを覗き込む。
確か朝食べていたフルーツのようなものが残っていたはずだ。
この貯蔵庫の中のものは勝手に使っていいと言われていたので、俺はそれと砂糖を混ぜて、フルーツ牛乳のようなものに……今回のは赤いイチゴのような甘酸っぱい木の実だったので、イチゴ牛乳か? とにかくそんなものにしてやった。
「わあーっ、甘くて酸っぱいの。美味しいねーっ♪♪」
ライゴが目をキラキラさせて飲んでいる。
口の周りについてしまった白い髭も、今日は拭いてやれた。
「シェルカの分もあるよ。ここに置いておくから、気が向いたら飲んでみてくれな」
声をかければ、シェルカはやっぱり机の向こうに引っ込んでしまったけれど、後から台所を覗いたら、飲み物は全部無くなっていた。
ザルイルと一緒の昼食の後、子どもたちが昼寝を始めたのを確認して、昼に許可をもらった火を使ってみる。
と言っても、スイッチを入れれば魔法の力で鉄板が熱くなるような仕組らしくて、使い心地としてはガスコンロよりも電磁調理器に近いか……。
おやつにと、ホットケーキのようなものを作ってみる。
ここしばらく食卓の上からザルイルが料理を作るのを見ていて、だいたいどれがどんな味の物なのかはわかりつつあった。
調理台まで届くようにと、ザルイルは椅子を重ねて行ってくれた。
「せめて今の二倍……。もうあとちょい大きくなれれば、こんな二つも椅子を重ねてぐらぐらさせながらやらなくても良さそうなんだけどな……」
俺の呟きは、誰にも聞かれていないつもりだったが、ホットケーキの焼ける甘い匂いにつられて起き出した子は、それを聞いていたらしい。
ライゴ用に、手に持って食べられる小さいサイズのを三枚。
シェルカ用に二枚焼いて、残りは自分の分と、明日用に……と焼いていたら、突然ガタンっと足元が崩れた。
咄嗟にフライバンのような形の調理器具だけは手放したが、できたのはそれだけだった。
俺は、来たる痛みに備えて体を強ばらせた。
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