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俺の死んでしまった理由
何でこんなことに?書店の大きなガラスと車が自分に向かって飛び込んでくる。激しい音がしているはずなのに、静寂とスローモーション……絶望の世界を回避することはできなかった。
それは不運な事故、親友冬野 尊の付き合いで本屋に行ったら外から暴走車が突っ込んできて俺にぶつかるなんて誰に想像できるわけもない。
運転中に心臓発作を起こしたお爺さんが脱力し、自重で踏み込まれたアクセルで加速した車が書店の大きなガラス窓に突っ込んだ。勢いで、アクセルから足は外れて車は停車したものの轢かれた俺は即死。
死んだ俺が事故を語れる理由?事故を起こした弥平さんが今、目の前で泣きながら俺に土下座をしているからだ。真っ白な世界で、ぼんやり発光したヒトガタの誰かと共に俺に土下座する姿はシュール。
弥平さんと土下座する発光したヒトガタの自称神の話によると、本来は親友の尊がここにいるはずだったらしい。彼を庇った記憶もないので不思議に思い首を傾げていると、自称神がもじもじと口を開き、千紘くんと尊くん、二人の魂色が凄く似ていたから間違えちゃった……と舌をペロリと出しながら小首を傾げながら衝撃の事実を告げた。こいつはポンコツ、人をイライラさせるタイプの。神の話を聞いていくが、話が進むほどに自分の表情は強張っていくのがわかった。
奇跡的に無傷で生き延びた尊は今、自分が本屋に付き合わせたせいで俺を死なせたと悔い嘆き、部屋に閉じ籠る日々を過ごしているらしい。あいつはちょっとあほな男だけど物凄くいいやつだ。施設育ちで、周りから見ると恵まれている環境とは言えないかもしれないが、生まれや育ちに卑屈になったりしないでいつも明るく前向きでクラスのムードメーカー。
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