お着替えトラブル

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お着替えトラブル

 安心して欲しくて告げたが、オリヴァーさんの目がカッと開きやっと頭を上げたヘンドリックを睨み付けている。彼が頭を横に振り何かを全力で否定しているのはわかる。恐かった顔が優しく戻り、朝御飯について声をかけられると俺の返事を待たずに、腹がくぅくぅと先に返事をした。羞恥に顔をあげられなくなる俺をさほど気にせずオリヴァーさんが声をかけてくる。 「過去の愛し子様は、お着替えなどのお手伝いを好まないとのことでしたが、チヒロ様はどうでしょうか?」 「じ!自分でできます多分!分からないときだけ手伝っていただけたら……」  顔を上げないまま答えると、にっこりとしたオリヴァーさんが室内のでかい扉を開ける。そこには、ぎっしりと服や装飾品が並べられていた。 「急なことで愛し子様専用のものはご用意がなく、当主が幼少期に着ていたものですがお好きなものをお使いください。お着替え終わりましたら、このベルを鳴らしていただければ食事のお迎えに参ります。」  そう俺に伝えると、不満気なヘンドリックを引きずるようにして部屋から出ていった。  クローゼットの服はどれもヒラヒラしたシャツと半ズボン……これをあのマッチョキングヘンドリックが?俺の想像力は仕事を放棄した。  昨日着てた俺の服はどこにやってしまったのか、いつの間にか着せられていた肌触りの良いつるつるした寝巻きをベッドサイドのテーブルに置き……全裸であることに気づく!俺のシャツとパンツは?!クローゼットにも下着のようなものは見当たらず、人を呼んで聞くのも恥ずかしいので服を直接身に付けることにした。ベストみたいなものも着けたし、太腿の途中までしかないふわんとした短パン?だけが心許ない。
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