第1話「向日葵の精と月の精霊」

1/1
前へ
/2ページ
次へ

第1話「向日葵の精と月の精霊」

「月に恋焦がれて~向日葵の花言葉は~」登場人物紹介 1. 向日葵(ひまわり)の精・はな 天真爛漫(てんしんらんまん)で勇敢な性格の向日葵の化身。 太陽の君に振り向いて貰うため。日々、命を懸けて挑んでいる。 2. 月の精霊・白夜-びゃくや- 優しく包み込むような雰囲気と、雅さが印象的な月の化身。 癒しの力で、はなを助ける。 🌛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・🌛 向日葵(ひまわり)の花言葉は、本数で変わるの。 1本は、“一目惚れ” 3本は“愛の告白”。7本、密かな愛、11本、最愛。99本は、“永遠の愛とずっと、一緒にいよう”108本は、結婚しよう。 そして、最後の999本目は……。 ここはとある田舎町。ここには今日も、懸命に彼に猛烈アタックする女性がいた。 女性と言っても、彼女は人ではない。ひまわり畑の向日葵の中の一輪。 そう、彼女は向日葵の化身だ。 蜂蜜色(はちみついろ)のロングヘア、エメラルド色の瞳、白いドレスと茶色の麦わら帽子。 彼女の本体は向日葵で化身の姿は、人にはみえない。 向日葵の精のはなは、今日も、恋焦がれる相手の太陽に熱い恋心を伝えようと勇猛果敢(ゆうもうかかん)に挑んでいた。 「今日こそは、太陽の君に振り向いてもらうんだから!」 はなは、燃え盛る太陽に無謀にも、真っすぐ突っ込んで行った。 しかし……。 「キャアーーー!!!」 その想いは、無慈悲(むじひ)にも太陽の熱波によって、打ち砕かれ、はなは火傷(やけど)を負って地上へと落下して行く。 彼女は、もう少しで激突する所で、たくさんの仲間達によって助けられた。 ☆★☆ やがて、夜になり、空には琥珀色(こはくいろ)に輝く。月が現れた。 月の光が、はなを照らしている。 光が粒子(りゅうし)になり、はなに集まってくる。 その光が弾けると、突如、凛々しく(みやび)な男性が現れた。 平安時代の狩衣(かりぎぬ)のような衣装、白い短髪の髪。 瞳も白く、右耳にはヒスイで作られた勾玉(まがたま)のイヤリングをしている。 彼は、痛々しい姿のはなを見つめると、はなの側にひざまずいて片手をかざした。 光がはなの体をおおって、何と、酷かった火傷が癒えて行く。 しばらくして、はなはゆっくりと目を開けた。 「大丈夫か?太陽に挑むなど。ずいぶんと無茶をしてくれるな」 はなは目の前の男性が、人ではなく。位の高い精霊であることに気がついた。 物腰が柔らかく、穏やかな彼。 「僕は月の精霊、白夜(びゃくや)。そなたの名は?」 「あたしは、はな。向日葵の精です。白夜さま、貴方があたしを助けてくれたの?」 白夜は静かにうなずく。 はなは、一目で月の精霊。白夜に惚れてしまっていた。 「白夜さま、白夜さまなら。あたしを優しく包んでくれますか?」 目を細めて、優しくうなずく白夜。 そして、はなは決意をする。 「白夜さま。貴方は、あたしの命を助けてくれた!あたし、貴方がすき……。 太陽の君よりも、貴方が!お願いです。あたしをお嫁さんにしてください。」 手を合わせて必死に頼み込む。はな。 その告白に驚きながらも、うなずく彼。 「はな。そなたが望むなら、それも良いだろう。僕もそなたを気に入っていた。だが、天の精霊と地の精の恋情は、太古より禁忌(きんき)とされている。それに、僕とは夜しか会えない。雨の日や月が雲に隠れてしまったら会えないよ。それでも良いのかい?」 見つめあう二人。しかし、はなは「貴方の妻になれるなら。耐えます!」と応えた。 「了解した。そなたが、そこまで覚悟があるのなら。僕の妻に迎えよう」 白夜は、力強くうなずき。はなを抱きしめた。 こうして、向日葵の精のはなは、月の精霊白夜の妻となった。 その日からはなは、暑い日中をひたすら耐えて夜には、夫の白夜と逢うようになった。 曇りや雨の日もはなは、もどかしい時を待ち続けて ふたりが逢えた日には、仲間の向日葵達は、彼女の心に応えて一斉に 月の方を向き、月光に照らされ金色に光ってふたりを祝福した。 ☆★☆ そして、決して結ばれない禁忌の存在とされていた。ふたりの間に子が生まれた。 名は、ののと名づけた。ののは、父の白夜の生命力を受け継いでおり、短命の母のはなよりも明らかに長命だった。 ある日、はなと白夜は、この星や生物を創りたもうた神に呼び出された。 『月の精霊と向日葵の精よ。わしは、先代の神の掟よりも、お前達の愛に応えてやりたい。』 「「神さま、有難きお言葉。光栄でございます」」 はなと白夜は、ふかぶかと(こうべ)()れた。 そして、はなは意を決したように口を開く。 「神さま、私はもうじき、枯れてなくなりこの命が尽きます。私は、これから先も白夜さまとののを見守って行きたいのです。お願いです。私にお慈悲(じひ)をお与えください!」 「僕からもお願い致します!妻の、はなの願いをきいてあげてくださいませ。僕もこの子もはなと別れるのは、身を切られるよりも辛いことです!」 白夜も必死になって頭を下げた。 『了解した……。わしの前で、誓いの口づけをしなさい。 それで、向日葵は月の生命の欠片で、記憶を失わずに毎年、生まれ変わることが出来る』 「はな、愛しているよ」 「あたしもです。白夜さま」 「あたしは、毎年生まれ変わり、貴方とこの子を愛し続けます。これから先もずっと、ずっと……」 白夜とはなは、神の御前で誓いの口づけをした。 はなと白夜の子、ののは、「きゃっ、きゃ」と愛らしく笑い。父と母に優しく抱きしめられる。 神は三人を見守りながら、祝福をした。 空から、光が降り注ぎ、三人を照らす。 親子は、尊くて大切な日々を共に過ごした。 はなは、それから間もなく。白夜と、ののに見守られながら天に召された。 「はな……。僕達は、はなが戻ってくるのをずっと、待っているぞ」 白夜は、はなの亡がらを胸に抱きながら、静かに号泣した。 深夜に天気雨が降った。それは、はなとの別れを惜しんだ空が、流した涙だったのかもしれない。 はな……。僕の愛しい妻よ。君の花のような笑顔を思い出さない日はない。 ねえ、白夜さま。知ってる?向日葵の花言葉は、本数で変わるの。 花言葉は1から999まであって。相手への愛の言葉が続いている。最後の花言葉は…(何度生まれ変わってもあなたを愛す)よ。あたしは、逢えない間も愛を送り続けるわ。 だから、ねっ?そんな悲しそうな顔しないで。笑顔で送り出してね。 ~おわり~ 🌛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・🌛 最後までお読みいただきありがとうございます。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加