頼りたくない相手

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頼りたくない相手

「シュクララ坊っちゃま、このイノグサ、坊っちゃまからのご命令について、よーく考えてみたのですがね」  シュクララが朝食を食べていると、いつものように同席していたイノグサが、今から目新しいことを申します、とでも言いたげに、勿体つけた口調で口火を切った。 「何も私などに探させなくとも、魔術王とやらの奇跡の魔法を使わせていただければ、シュクララ坊っちゃまのお望みとおりのものを、いとも簡単にアルヴァロード様にお贈りすることができるのでは……?」  むしろ何故そうしないのかと訝しむような様子で、イノグサは神妙な表情を作って見せている。  しかし、シュクララは 「イノグサ、別にボクだって今気付いたわけではないけどサ、君は大馬鹿者だね。昨日、自分で言ってたじゃないか。アルヴァロードはガグロバルとの愛が復活することを望んでる。つまりサ、全然ボクのことを愛してないんだろう? そこに、強大なる魔術王が現れるわけだからサ。その偉大なる魔術を持った男の力を借りてしまったら、ボクが何をしたって無駄に決まってるだろう? 運良く上手くいって、ガグロバルのことを忘れてくれたとしても、せっかく手に入りかけたと思ったアルヴァロードは魔術王に靡いてしまう、そういうオチなのサ。だからこそボクは君に頼んでるんだよ。君はボクの召使いだからね。君がボクの命を受けて動いたなら、そうすることを思いついたボクの意志が一番重要な意味を持つだろう? ところが、魔術王に頼んだ途端、どんな凄い魔術で実現したのか、皆が皆、そこに大注目サ。ボクの出る幕ではなくなってしまうのが分かるだろう?」 「た、確かに……。本当に、シュクララ坊っちゃまは、抜けているように見えて、いつもよくお考えでいらっしゃいます」  イノグサは、シュクララの考え深さに感心したが、それでも肝心のアルヴァロードへのプレゼントを見つける方法が分からないので、内心ひどく落ち込んでしまったのだった。
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