第十五章:女と男の間――美生子十四歳の視点

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***** 「ミオコちゃんてこういう子なんだね」  食事を終えて何となく年の近い同士で集まると、今日初めて顔を合わせたハルの再従兄(お母さん同士が従姉妹らしい)のマサキ君は陽に焼けた顔に驚きを浮かべると、どこか戸惑った風に続けた。 「もっと男みたいな子かと思った」  陽希とさして変わらぬ長身の眼差しがハーフアップの髪を垂らした自分の顔から夏服の突き出た胸の辺りに注がれるのを感じる。  お前なんか当たり前に女だろ、と言われた気がした。  こちらより頭一つ分背の高い学ランの二人に対して、白いセーラー服に紺のプリーツスカートを履いた自分がまた場違いな偽物に思えてくる。  まだ中学生の自分たちは大人のような喪服の代わりに学生服を着ているけれど、これが既に“生まれついての男です”“女です”と宣言する形に分かれているのだ。  ブラジャーの胸下を締め付ける息苦しい感じが蘇った。  白い夏服でも透けないようにベージュのブラジャーを着けているけれど、他の二人はそもそもこんな暑苦しい拘束具じみた下着をつける必要自体がないのだ。  月五日間、股から血が出ることもないし。 「性格が男だから」  答えたのは自分ではなく苦笑いしたハルだった。  何だかこの二、三日で頬がひとへら削げて顔色も悪くなったみたい。  折り合いが良くなかったにせよ、やっぱりたった一人のお母さんが亡くなったのは辛いのだ。  清海おばさんはシングルマザーで苦労しながら一人息子を育ててまだ四十代も前半で逝ってしまった。本人だってこんな形で死にたくはなかっただろう。
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