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「ストレスが多いもんですから」
故人の元夫は銀縁眼鏡のレンズを一瞬サッと光らせると小さな唇を歪めて笑った。
嫌な爺さん。
微かにこちらにまで流れて纏わりついてくる紫煙の臭いを吸い込みながら、それまで胸の奥に曖昧に堆積していて何となく自分でも認めるのを避けていた相手への感情がはっきりと嫌悪や反発の形に固まるのを覚えた。
十数年も前に離婚した元妻の葬式に来てその身内に囲まれて過ごす今の時間がこの人にとって心楽しい訳がない。
それは中学生の自分にも察せられる。
だが、この外様の弔問客からはどこか開き直った、ふてぶてしい、周囲を侮る傲慢さが透けて見える気がした。
側の二人を見やると、マサキ君は日焼けた顔に明らかに不快げな――この子は好意でも嫌悪でも生のままに出せる質なのだろう、そして、ハルは蒼白い顔にどこか虚ろな眼差しでこの初見の縁者を見詰めている。
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