第十五章:女と男の間――美生子十四歳の視点

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「吸う人でも子供が出来ると大体はやめますけどね」  低く刺すような声に驚いて振り向くとお母さんが全体に表情を消した顔つきで、しかし底に鋭さを含んだ視線を向けていた。 「自分優先の人はストレスだ何だと理由付けて結局やめない」  相手は薄く小さな唇を含み笑いの形にしたまま、銀縁眼鏡の奥の鋭い目――彫りの深い、一見するとどこか白人ダブルめいた印象の目だが不機嫌な色を帯びると三白眼気味になるようだ――で喪服姿の母親と白い夏のセーラー服の自分を交互に見やった。 ――こいつらは母娘だな。顔も体つきも似ている。  そんな心の声が聞こえるような気がした。  俺とお母さんは大きな丸い目も天パの髪も突き出た胸も似通っているから。  そう思うと、カッと顔が熱くなって夏服の下のブラジャーがまた胸を締め付ける感じが蘇った。
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