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第十六章:なりたいものになれる日――陽希十五歳の視点
「本当に俺も行って大丈夫?」
お祖母ちゃんが出がけに持たせてくれたクッキーの詰め合わせがあるから一応は飛び入りでも失礼には当たらないはずだ。
頭ではそんな算盤を弾きつつやはり冬向けの厚手のジャケット――これもこの前、貴海伯母さんが送って寄越したばかりの雅希君のお古だ――を着込んだ胸の裡には不安が頭をもたげてくる。
「心配ないって」
カーキ色の仮装の軍服を着込んで同じ色の制帽を緩い一つのお団子に結った頭に被った美生子は笑う。
「皆、優しい子たちだから」
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