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「蓮女のお嬢さんたちだからな」
ミオは結局、地域でもトップの女子高に行った。
むろん、そこが偏差値的に一番合っていたという事情もあるが、女としての自分を受け入れたのだろうか。
高校受験前にバレエは辞めたが、髪はまだ長くしていて普段はハーフアップに結んでいる。まるで昔の人が好むと好まないとに関わらず髪を一定以上に伸ばして髷を結っていたようにだ。
「他の子たちも兄弟や他校の友達を連れて来るみたいだし」
「彼氏とかじゃなくて?」
小柄で胸だけ突き出た華奢な体に仮装の軍服を纏った相手はこちらのさりげない問い掛けにカラカラと笑った。
「いたら見物だな」
十月末の、この地域では既に初冬の肌寒い空気の中で鼻をほんのり紅くした美生子の薄桃色の顔は円らな瞳を細めて飽くまで無邪気な笑いを浮かべている。
お前は俺とはそうなりたくないのか。
いい加減もう慣れても良いはずなのに重さを増してくる痛みを押し隠しつつ問いを重ねた。
「その格好は軍人?」
ハロウィンパーティだしやっぱり俺も地味でも何かの仮装をすべきだったのだろうかと改めて悔やみつつ、落ち葉の舞ういつもの近所の風景からは明らかに浮き上がって見える相手の出で立ちに微かな安堵も覚えた。
美生子の面が笑顔のまま微かに寂しくなる。
「一応、川島芳子のつもり」
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