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あ……。
思わず声にならない声が出る。
「ああ、笹川陽希君、だよね?」
ハロウィンパーティの最後に現れた、主催者の白い毛皮のもののけ姫に対して藍色の装束で蝦夷のアシタカの仮装をした客は驚きつつもおっとりした口調で尋ねた。
「はい」
遅れてくる最後の一人も可愛らしく仮装した女の子かと思っていたら、同じ中学から今は地域トップの男子高に進んだ大河先輩だった。
部屋の女の子たちの視線がこの長身の、琥珀じみた肌をした、太い一文字眉にややギョロついた大きな目の少年に移動する気配を感じた。
“この暗くて冴えない一つ下の子よりもっと目を引く仮装のイケメンが来た”
そんな風に思われている気がして普段着のジャケットとジーンズを着てソファに腰掛けた尻の辺りがまたモゾモゾする。
別にこの女の子たちの歓心を買いたいわけではないが、そんな風に内心で比べられて見下されていると感じるのはやっぱり気分の良いものではない。
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