第十六章:なりたいものになれる日――陽希十五歳の視点

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「あれ、知り合いなの?」  もののけ姫が自前のペイントを施した顔に驚きを浮かべた。  改めて見直すと、ややギョロついた目といい尖り気味の顎といい隣のアシタカと似通った面影がある。 “夫婦はいとこほど似る”という言葉が頭を過ぎったところで、軍服姿の美生子が強張った声で答えた。 「同じ中学だから」  制帽で目を影にした顔は常の薄桃色から心持ち白くなりつつある。  これはまずい兆候だ。 「あれ?」  仮装のアシタカは大きな目をいっそう丸くする。そうすると、真顔だと少し険しげな面差しに愛嬌が出た。 「長橋さんか」  ゆったりした話し方で親しくない人間にもこの先輩が育ちの良い人だと分かる。 「その格好だから分からなかった」 「男装の王女だからね」  蒼ざめたというより血の気が引いて白くなった顔の美生子は華奢な体には明らかに肩幅の余った軍服の、そこだけ突き出た胸を張った。
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