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「ミオはさ」
口にしてからワーッと体の中の血が湧き上がって握り締めた拳に冷たい汗が滲んだ。
「あのもののけ姫の格好してたサナちゃんが好きなんだね」
立ち止まって振り向いた美生子の顔は無表情な、しかし、逆光で蒼白く浮かび上がって見える。
「リエちゃんやターシャさんも好きだったよね」
「ハル」
相手は虚ろな声だ。
出来るだけ何でもない、大河先輩のような相手の良い可能性を当たり前に信じている笑顔でなければならない。
「ずっと前から知ってたよ」
紅く燃える夕陽が自分の顔を照らし出すのを感じた。
「だから、俺にはもう隠さないでいい」
ジャケットを脱いで、冷えた空気がサッと背や腕を取り巻くのを感じながら、相手のレプリカの軍服の肩に掛ける。
他人が見たら彼氏が彼女を気遣う中高生カップルと思うだろうなと苦笑しつつ、こんなペラペラの、服というより服の形をしたオモチャを身に着けてミオはこんな寒い道を歩いていたのだ、もっと早く気付いてやれば良かったと舌打ちしたくなる。
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